
リテールメディア広告市場におけるビッグテクノロジーの台頭
GoogleとMetaの両巨頭は、急成長するリテールメディア業界でのシェアを巡り、競争を繰り広げている。この市場はますます細分化されているが、依然として大きな成長ポテンシャルを秘めており、特にDSP(デマンドサイドプラットフォーム)の重要性が増している。
リテールメディアの予算規模の拡大
eコマースジャーナリストのキリ・マスターズ氏が最新の「Retail Media Unpacked」で説明しているように、リテールメディア広告市場はついに「争うに十分な規模」になった。WARCの最新予測によれば、2025年の世界のリテールメディア広告市場は1,787億ドルに達し、前年比で15.4%の成長を見せるとされている。この成長率は、ソーシャルメディアやコネクテッドTVの成長を上回るペースであり、リテールメディアが注目の広告分野であることを示している。
アマゾンが圧倒的なシェアを誇る一方、広告費の大半は世界中の250以上のリテール・メディア・ネットワーク(RMN)に分散している。これにより、広告主はますます多様化した広告プラットフォームに対して、効率的に予算を配分する必要がある。
DSPの重要性と技術仲介業者の役割
デマンドサイドプラットフォーム(DSP)は、リテールメディア広告市場の標準化とスケール拡大を可能にする重要な要素となっている。DSPは、複数の小売業者の在庫を統合し、ブランドがより効率的に広告を購入できるようにする。これにより、広告主は各小売業者の個別の広告枠にアクセスする手間を省き、広範なリーチを確保することができる。
DSPをリードする企業として、Google、Meta、Criteoなどが挙げられる。これらの企業は、リテールメディア広告市場において大きな影響力を持っており、それぞれの独自の技術を駆使して競争力を高めている。
Googleのアプローチ:DV360とPAIRクリーンルーム技術
Googleは、DV360内で「リテールメディアソリューション」を展開し、Privacy-Preserving Audience Insights and Reach (PAIR)というクリーンルームアイデンティティ技術を利用している。これにより、小売店のオーディエンスをYouTubeやコネクテッドTV(CTV)などのオープンウェブでターゲティングすることが可能となっている。また、コストコ、ユナイテッド航空、レガルシネマとのパイロットを通じて、リテールデータをDV360のオーディエンスセグメントに統合し、特定ブランドと非特定ブランドを区別する仕組みを実現している。
Metaのアプローチ:クローズドループ測定とAPI統合
Metaは、Lowe’sなどの小売業者と提携し、SKUレベルの売上データをMetaの広告システムにフィードバックすることで、クローズドループ測定を実現している。これにより、広告主はキャンペーンの効果を正確に測定でき、効果的な広告戦略を立てることが可能となる。さらに、Best BuyとのAPI統合により、ロイヤルティデータや購買データをMetaの広告システムに直接取り込むことができ、ターゲティング精度を向上させている。
Criteoのアプローチ:オフサイトアクティベーションの強化
Criteoは、約225の小売業者向けに広告サーバーやSSPスタックを提供しており、アマゾンやウォルマートを除く主要な供給フットプリントを持つ企業の一つである。CriteoのDSP「Criteo Commerce Max」は、オンサイトとオフサイトの両方の在庫にアクセスできるため、広告主は一度のログインで幅広い広告枠をターゲティングすることができる。
リテールメディア広告市場は急速に成長しており、特にGoogle、Meta、Criteoなどのビッグテクノロジー企業がその競争をリードしている。これらの企業は、データとテクノロジーを駆使して、広告主がより効率的にリーチを拡大し、ターゲティング精度を向上させるためのプラットフォームを提供している。今後、リテールメディアの成長が続く中で、DSPとその技術がますます重要な役割を果たすことになるだろう。(出典:WARC、)