
スプライトがペプシを抜いた理由:ポップカルチャーと共鳴するブランド戦略
米国炭酸飲料市場で第3位に浮上
コカ・コーラ傘下のスプライトは、ペプシを抜き、米国における炭酸飲料市場で第3位の座を獲得した(ビバレッジ・ダイジェストのデータより)。この結果は、ブランドの象徴的なキャンペーン「Obey Your Thirst(渇きに従え)」の復活を含む積極的なマーケティング施策によるものであり、Z世代やミレニアル世代との文化的接点を強化したことが成功の背景にある。
「Obey Your Thirst」の再解釈と文化的共鳴
1994年にスタートした「Obey Your Thirst」キャンペーンは、自己表現や個性を肯定するメッセージを軸に、多くの若者層から共感を得てきた。今回の復活版では、NBA選手アンソニー・エドワーズやスプリンターのシャカーリ・リチャードソンを起用し、現代の社会的プレッシャーやSNS文化に対抗する自己肯定のメッセージとして再提示している。
コカ・コーラ北米部門のシニアクリエイティブディレクターであるAP・チェイニー氏は、「今の時代において、自分らしさを貫くというメッセージはより重要性を増している」と語った。
直感と文化の先取り:影響力のある人選とタイミング
スプライトは、注目のミュージシャンやアスリートと連携することで、文化的な先見性を発揮してきた。たとえば、ラッパーのDoechiiをLimelightキャンペーンに起用したのは、彼女がグラミー賞を受賞する前であった。単なる有名人マーケティングではなく、ブランドが大切にする「Authenticity(真実性)」に合致するパートナーの選定を優先している点が特徴である。
チェイニー氏は「マーケティングの背後には戦略もあるが、直感に従う判断も大きい。カルチャーとの接点を見極める嗅覚が不可欠だ」と述べている。
女性スポーツへの戦略的アプローチ
スプライトは、女子スポーツの将来性にも注目している。女子バスケットボールの1対1トーナメント「Unrivaled」のパートナーとなり、早期から新興リーグをサポートしている。同ブランドはこの取り組みを2026年以降も継続し、文化との関係構築を深める考えである。
デジタル施策とフレーバー開発の融合
かつてはテレビCMだけで十分だったが、今日のマーケティングは複数チャネルでの接点が不可欠となっている。スプライトは、QRコード付きパッケージから展開する「Obey Days」といったキャンペーンを通じて、ブランド体験をデジタルに拡張している。
さらに、「Sprite Squad」などの新プログラムでは、音楽やファッションなど消費者の関心軸に沿ったコンテンツを通じてエンゲージメントを促進。ハウスミュージックにフォーカスした「Black House Radio」との連携や、新たなフレーバー「Sprite Chill」の導入も、文化的インサイトを踏まえた施策の一環である。
スプライトの将来性とブランド戦略の核
「スプライトは今、明確な成長のモメンタムを持っており、コカ・コーラのポートフォリオ全体の中でも、将来に向けた重要な柱の一つである」とチェイニー氏は語る。
ブランドの今後の方向性は、単に新商品を打ち出すだけでなく、「文化の一部」としてのポジションを確立・維持することにある。スプライトは、若年層の共感を得るストーリーテリングと直感的なパートナー選定、そしてデジタル体験の融合によって、時代の感性を捉え続けている。(出典:Coca-Cola, Digital Marketing Dive他、画像:Sprite)