
ストリーミングサービスがスポーツ放映権への投資を拡大、広告市場にも影響
ストリーミングサービスは、2025年のスポーツ放映権市場において、全体の20%を占める見込み である。NetflixやAmazonのような企業は、新規加入者を獲得し、スポンサーシップやブランド提携による広告収益を確保するため、ライブスポーツコンテンツに積極的に投資している。
ストリーミングサービスにとってスポーツが重要な理由
ストリーミング市場が成熟する中で、ライブスポーツは加入者獲得・維持の強力なツールとなっている。報道によると、Netflixはタイソン対ポールのボクシングマッチを通じて約150万人の新規加入者を獲得し、NFLのクリスマスゲームの放映契約では約70万人が新規登録したとされる。
さらに、ライブスポーツの視聴者層は広告主にとって極めて価値が高い。WARCの調査によると、スポーツスポンサーシップのブランド認知度は、他のエンターテイメントコンテンツよりも高く、73%対3%という大きな差がある。また、スポーツスポンサーシップは従来の広告よりも感情的な共感を58%高め、ブランドの成長を促進する効果がある ことが確認されている。
ストリーミングサービスのスポーツ放映権投資の現状
Ampere Analysisのデータによると、2025年にはスポーツ放映権市場全体の規模が640億ドルに達する見込みで、そのうちストリーミングサービスが125億ドルを占める。
- 最大の支出者はDAZNで、2025年FIFAクラブワールドカップの放映権を獲得。
- 2位はAmazon、3位はYouTube、4位はNetflix と報じられている。
ストリーミングサービスは既に2025年のスポーツ放映権に125億ドルの投資を確約 しており、今後も増加する可能性がある。また、ライブスポーツは直接的な収益源であるだけでなく、周辺コンテンツにも大きな価値がある。
Netflixの『Drive to Survive』は、F1をテーマにしたドキュメンタリーシリーズであり、アメリカ国内でのF1人気を押し上げる効果を生んだ。これにより、F1の放映権を持つESPNは視聴者数を増加させ、1レースあたりの視聴者は放送前の2018年の約55万4,000人から、2024年には約110万人に倍増している。
F1のアメリカ国内の放映権は2024年末で期限を迎えるため、Netflixをはじめとする大手ストリーミング企業が権利獲得に関心を示す可能性が高い。
また、AmazonはNBAの放映権を活用し、初のプライム・ビデオ専用スタジオ番組を展開予定である。Amazon Adsのライブスポーツおよびビデオセールス責任者であるDanielle Carney氏は、この取り組みを「Amazonのコアバリュープロポジション」と位置づけている。
AmazonのNBA関連番組は、スポンサーシップを念頭に置いた設計となっており、ブランドとの統合が進む見込みである。広告主に対して、Amazonが持つファーストパーティデータを活用した測定技術を提供し、広告の効果を最大化することが期待されている。Carney氏は、「何兆ものデータポイントと測定結果を活用できることがAmazonの強み」 と述べている。
今後の展望
- ストリーミングサービスのスポーツ放映権投資は今後も拡大 し、2025年には総額125億ドルに達する見込み。
- スポーツコンテンツは単なる試合中継にとどまらず、ドキュメンタリーや分析番組など、新たなエンターテイメントの形として成長。
- 広告市場において、スポーツスポンサーシップの価値はさらに高まり、ブランド認知向上や感情的なつながりの強化に貢献。
- AmazonやNetflixのようなストリーミング企業は、放映権獲得と同時に、独自のスポーツ関連コンテンツを強化し、視聴者のエンゲージメントを高める戦略を推進。
ストリーミング業界におけるスポーツコンテンツの影響力は、今後ますます拡大することが確実視されている。(出典:Advanced Television, the Hollywood Reporter, the New York Times, WARC)