
酒税改正で加速する「ビール回帰」―大手各社が第3のビールを相次ぎビールへ刷新
2026年10月に予定される酒税改正を前に、国内ビールメーカー各社が第3のビールの主力ブランドを相次いでビールへ転換する動きを加速させている。これまで価格面で優位性を持っていた第3のビールだが、税率の見直しによってビールとの価格差が縮小するためである。各社はビール市場への回帰を見据え、商品価値の向上とブランド強化を進めている。
キリンビールは、第3のビールとして展開してきた「本麒麟」を刷新し、2026年11月からビールとして販売する方針を明らかにした。新商品は麦芽100%を採用し、ビール愛飲者が好む麦本来の豊かな味わいを追求した設計となる。中価格帯市場を主戦場としながらも、節約志向が根強く残る消費者層に対して、手頃な価格で本格的なビール体験を提供することを狙う。
同様の動きは他社にも広がっている。サントリーは「金麦」をビールとして再構築し、従来の飲みやすさを維持しながら飲み応えを強化した商品を10月に投入する予定である。サッポロビールも「GOLD STAR」と「麦とホップ」をビールとして販売する方針を打ち出しているほか、アサヒビールも「クリアアサヒ」のビール化を検討している。

酒税改正がもたらす市場構造の変化
今回の動きの背景には、長年進められてきた酒税制度の見直しがある。政府は2020年から段階的に税率改正を進めており、類似した酒類間で大きく異なっていた税負担を是正し、公平な競争環境を整備することを目指してきた。
2026年10月の改正では、350ミリリットル換算でビール、発泡酒、第3のビールの酒税がすべて54.25円に統一される。これによりビールは減税となる一方、第3のビールは増税となり、従来の価格差は大幅に縮小する。
かつて第3のビールは低税率を背景とした価格競争力を武器に急速に市場を拡大した。2020年にはビール類市場全体の販売数量の46%を占め、ビールを上回る規模に成長した。しかし、その後の税制改正によって価格面の優位性が薄れた結果、消費者の需要は徐々にビールへと回帰し始めた。2023年にはビールのシェアが52%まで上昇した一方、第3のビールは33%まで低下している。業界各社は今回の税制改正によって、この流れがさらに加速すると見込んでいる。

ブランド価値向上が新たな競争軸に
市場環境の変化を受け、各社は単なるカテゴリー変更にとどまらず、主力商品の品質向上にも力を入れている。
キリンは主力ビール「一番搾り」を刷新し、ホップ配合を見直すことで麦由来の雑味を抑え、より飲みやすい味わいへと進化させる。サントリーも「ザ・プレミアム・モルツ」の製法を改良し、より深いコクを実現した。アサヒビールは新ブランド「アサヒゴールド」を投入したほか、今後は主力商品の「スーパードライ」についても改良を予定している。
これまでのビール市場では税率による価格差が商品選択に大きな影響を与えてきた。しかし今後は価格優位性よりも、味わいやブランド体験、品質への評価が競争力を左右する時代へ移行していく可能性が高い。酒税一本化を契機として、日本のビール市場は再び本格的なブランド競争の局面を迎えようとしているのである。(出典:讀賣新聞、画像:キリンビール、サントリー、Unsplash)
















