ブルックス・ブラザーズ、アメリカ最古のアパレルブランドを再定義する試み

ブルックス・ブラザーズは2026年3月、ブランドの新たな位置づけを示すマーケティングキャンペーン「Make It Yours」を開始した。1818年創業の同ブランドは、米国で継続的に事業を続ける最古のアパレルブランドとして知られる。現在はCatalyst Brandsのポートフォリオに属しており、同社の最高顧客兼マーケティング責任者であるMarisa Thalberg氏が今回のブランド再定位を主導している。
タルバーグ氏は、ブランドの歴史について「アメリカのファッションと文化の構造そのものに組み込まれている存在だ」と語る。長い伝統と強固なブランド遺産を持つ一方で、現代の消費者にどのように語り直すかが重要な課題となっていた。
今回のキャンペーンは、ブランドそのものを変えるのではなく、「語り方」を更新することを目的としている。すなわち、歴史的なスタイルを現代の個性やライフスタイルと結び付けて提示することで、新しい世代との接点を生み出そうとする試みである。

「Make It Yours」──伝統を個性で再解釈する

「Make It Yours」というコンセプトは、ブルックス・ブラザーズが築いてきたクラシックなスタイルを、個々人の表現として取り入れるという発想に基づく。ブランドが生み出した代表的なアイテムの一つであるボタンダウンカラーのオックスフォードシャツなど、長い歴史を持つ定番スタイルを、現代のライフスタイルに合わせて再解釈することがテーマとなっている。
この取り組みは、近年のファッション潮流とも関係している。いわゆる「静かな贅沢(Quiet Luxury)」や新しいプレッピースタイルが再評価される中で、ブルックス・ブラザーズの伝統的なデザインは再び時代の空気と共鳴しつつある。
タルバーグ氏によれば、伝統的ブランドはしばしば「年配層向け」という固定観念に縛られがちだという。しかし実際には、ブランドが本来持つスタイルの幅はそのイメージよりも広い。今回のキャンペーンは、その認識を広げることを狙っている。

多様な人物を通じてブランドの意味を語る

キャンペーンでは、世代や分野の異なる人物たちが登場し、それぞれの視点からブランドの意味を語る構成になっている。俳優のLeslie Bibb、コメディアンのAlex Edelman、ファッションアイコンのNick Woosterなど、文化や業界を横断する顔ぶれが参加している。
彼らはブルックス・ブラザーズの服を身にまとい、15秒および30秒の動画の中で、自分にとってブランドがどのような意味を持つのかを語る。こうした演出によって、ブランドを「特定の年齢層のもの」としてではなく、「感性によって選ばれるスタイル」として提示している。
映像制作はフォトグラファーのコリエナ・レントミースターが担当し、キャンペーンはソーシャルメディア、デジタル広告、オンライン動画、屋外広告など複数のチャネルで展開される。企画はCatalyst Brandsの経営陣に加え、ブルックス・ブラザーズのクリエイティブディレクターであるMichael Bastianらが中心となって進められ、PR面ではFleishmanHillardとH&S Communicationsが支援している。

親会社の戦略とブランドポートフォリオ

親会社のCatalyst Brandsは、Sparc GroupとJCPenneyの合弁によって2025年に設立された企業である。ブルックス・ブラザーズのほかにも、Aéropostale、Eddie Bauer、Lucky Brand、Nauticaなどを傘下に持ち、さらにJCPenneyのプライベートブランド事業も管理している。
タルバーグ氏はポートフォリオ全体の最高顧客・マーケティング責任者として、ブランドごとに異なる戦略を設計する役割を担う。顧客インサイトやデータ分析、パートナー企業との連携などを横断的に活用しながら、それぞれのブランドに最適なマーケティングを構築する方針である。
例えばJCPenneyでは「Yes, JCPenney」というマーケティングプラットフォームを通じて、百貨店ブランドに対する既存のイメージを覆すことを目指している。一方でブルックス・ブラザーズは、ポートフォリオの中でも特別な存在として扱われている。CEOのKen Ohashiとタルバーグ氏は、このブランドの独自性を守ることが重要だという認識を共有している。
ブルックス・ブラザーズは、あくまでブルックス・ブラザーズであるべきだという考え方である。ブランドの核を守りながら、その物語を現代の消費者に向けて更新する――それが今回のキャンペーンの本質なのである。
さらに近年、同ブランドでは女性顧客の存在感も高まっている。現在、裕福な女性顧客は顧客基盤の約30%を占めており、女性向け事業は5年連続で成長を続けている。こうした変化もまた、ブランドの語り方を広げる背景となっている。(出典:MARKETING DIVE、画像:Brooks Brothers)

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