ディオール、代官山に誕生した「バンブー パビリオン」という新拠点

ディオールは2月12日、東京・代官山に「ディオール バンブー パビリオン」を開設した。単なるブティックではなく、建築、ランドスケープ、インスタレーション、デザインを横断的に組み合わせた総合的プロジェクトである。延床面積は約1800平方メートルに及び、ブランドの世界観を空間全体で体現する構成となっている。
外観の着想源となったのは、パリ本店「30 Avenue Montaigne」のファサードである。それをゴールドカラーの竹によって再解釈し、日本の竹林を想起させる舞台美術的演出へと昇華させた。時間帯によって印象が大きく変化し、昼は光を受けて軽やかに、夜は照明によって幻想的に浮かび上がる。

日本的意匠とメゾンのコードが交差する内部空間

内部では、和紙を用いた壁面仕上げが柔らかな光を拡散し、寄木細工の床が温もりを添える。さらに、アイコンバッグ「レディ ディオール」を提灯状に再構成した造形が空間にリズムを与え、ブランドの象徴的モチーフと日本の伝統意匠が交錯する設えとなっている。
緑の存在も重要な要素である。ランドスケープを手がけたのは、“プラントハンター”として活動する西畠清順である。希少植物を配した庭園は禅の思想を軸に構成され、都市の喧騒から距離を置く静謐な環境を創出する。植物に囲まれた回遊動線は、商業施設というよりも瞑想的体験を志向する空間設計である。

日本人アーティストとの協働による空間表現

館内各所には、日本人アーティストやデザイナーの作品が展開される。テキスタイル作家の光井花は、い草や刺繍を素材としたタペストリーをフィッティングルームに設置し、「トワル ド ジュイ」を想起させる有機的モチーフを独自に再構築した。
併設のカフェ「Café Dior by Anne-Sophie Pic バンブーパビリオン」では、紙を主素材に制作を続ける柴田あゆみが、天井から降り注ぐ花のインスタレーションを手がけた。ノルマンディーのバラ園へのオマージュを、切り絵技法を応用した光の庭へと転換し、繊細な陰影を生み出している。
植物表現の中核を担うのは、フラワーアーティストの東信である。花を樹脂などに封じ込める《ブロックフラワー》や、植物を小宇宙のように構成する《パルダリウム》が空間に点在し、強い存在感を放つ。また「レディ ディオール」を花束へと変容させる試みも行われ、プロダクトと自然表現の融合が図られている。

実験性と文化的プラットフォームとしての意義

家具やオブジェにも実験的姿勢が貫かれている。TAKT PROJECTは、メゾンの象徴的パターン「カナージュ」を手織りガラスと樹脂によって透明な家具へと転換した。一方、we+は、魚市場から回収された発泡スチロールや微細藻類入り樹脂といった循環素材を用いた家具を制作し、サステナビリティと詩的表現を両立させている。
こうした多層的構成により、本パビリオンはブランドの歴史紹介や最新コレクションの提示にとどまらず、建築とアートが主導する実験的空間へと高められている。商業建築でありながら、日仏のサヴォワールフェールが交差する文化的プラットフォームとしての性格を帯びる点が特徴である。
代官山に出現した竹の建築は、ラグジュアリーとアートの関係を再考させる新たな試みであり、ファッションブランドによる空間戦略の進化形と位置づけられるものである。(出典、画像:美術手帖)

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