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多くの有名ブランドがグローバル化に失敗している

企業の自信はしばしば現地の現実にぶつかり、甚大な損失や撤退を招く。米国でカルト的な成功を収めたブランドが、別の国では受け入れられず撤退を余儀なくされる事例は枚挙にいとまがない。成功体験をそのまま別市場に持ち込めば通用するという思い込みこそが、失敗の共通因子である。

リキッド・デス

パンク調のパッケージと挑発的スローガンで米国市場を席巻した缶入り飲料のリキッド・デスは、ブルックリンの文脈では受け入れられても、英国では事情が異なった。2023年に英市場へ投入し、短期間である程度の売上を得たものの、2025年初めに撤退した。消費者は「蛇口で十分だ」と考え、高額なボトルウォーターに価値を見いださなかったのである。成功そのものが悪いわけではないが、「受け入れられる理由」が市場ごとに大きく違うことを見落としていた。

インフルエンサーブランドの限界:プライム・ハイドレーション

インフルエンサー起点のブランドも例外ではない。若者向けに話題化したプライム・ハイドレーションは、英国で2023年に高い売上を記録したが、2024年には急落した。ティーン層の“一過性の熱狂”が去ると、リピート購入につながらないことが露呈した。誇大な初動は顧客を呼び込んでも、継続的な需要を生むのは品質と日常的な価値である。

ベスト・バイとテスコ

物理チャネルの誤ったモデル適用も致命的だ。ベスト・バイは英国で大型店を展開したが、現地の買物行動を誤解し多額の損失を出して撤退した。テスコは米国で小型店フォーマット(Fresh & Easy)を試みたが、米国消費者の購買パターン──週に一度大量に買う習慣──と合致せず、大きな赤字を招いた。両社とも資金とリソースは潤沢だったが、現地の購買行動や文化的嗜好への真正な理解が欠けていた。

ウォルマートのドイツ撤退

ウォルマートは1997年にドイツ市場へ進出したが、既に地元にはアルディやリドルといった強力なディスカウント勢が存在していた。米国式の労務・文化モデルや運営手法をそのまま持ち込んだ結果、消費者や規制・労働環境との摩擦が生じ、2006年に撤退を決めた。市場固有の競争環境と文化的受容性の読み違いが敗因となった。

カフェ文化とスターバックスの教訓

オーストラリアでは、すでに洗練されたエスプレッソ文化が根付いていたため、スターバックスの急速な拡大は歓迎されなかった。現地のコーヒー嗜好やカフェ文化を軽視した商品設計と表現は、消費者の反発を招き、多数の閉店へとつながった。

多くの撤退劇に共通するのは、現地の声を聴かず、自社ブランド力だけで市場を制覇できると過信した点である。文化は「修正すべきバグ」ではなく複合的な全体であり、言語の翻訳だけでなく購買習慣、価格感覚、競合構造、社会的文脈といった要素を総体的にローカライズする必要がある。

グローバル成功の条件

世界で成功するブランドは、新市場を「征服地」ではなく学びの場として扱い、アプローチ全体をローカライズする。言語だけでなく体験設計、流通戦略、価格設定、コミュニケーションのニュアンスを現地に合わせて調整する謙虚さがある。自分たちがすべてを知っているとは考えず、現地の消費者や競合を徹底的に理解してから提供を始める姿勢が欠かせない。

派手なロゴや巨額のマーケティング予算で短期的に注目を集めることはできるが、長期的に根付かせるには現地理解と適応が不可欠である。次に国外展開を図るブランドは、まず現地の声に耳を傾け、謙虚に学び、適切に変える準備をするべきである。さもなければ、次の“生意気な国内ブランド”は同じ教訓を税金と損失で支払うことになるだろう。(出典:CREATIVE BLOQ、画像:リキッドデス、スターバックス)

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