
地味なセレブたちがノンアルコールビールに注ぐ
飲酒を控えるライフスタイルを選ぶ米国消費者が増える中、ノンアルコール飲料カテゴリーが注目を集めている。俳優チャーリー・シーンとコメディアンのジョン・ムラニーは、その流れに乗る最新のスターであり、アルコールを含まないビールや飲料のブランドに関与している。両者とも断酒の経験を公にしており、自身の選択を反映した商品開発・プロモーションを行っている点が特徴である。
チャーリー・シーンの参入:ワイルドAFブルーイング
チャーリー・シーンはワイルドAFブルーイングの創業に関わっている。同ブランドはシーンの長年の代理人トッド・クリストファーや、消費者製品に強いブランド構築会社サイレント・グループと共同で立ち上げられた。ボストン拠点のハープーン醸造所が製造を担当し、デビュー作は柑橘とモルト香のある伝統的なゴールデンスタイル「コールド・ゴールド」と名付けられたフレーバーである。シーンは、品質が不十分だった既存のノンアルコール市場の状況を変える意図で、自ら製品を作る決意を示している。
ジョン・ムラニーの動き:Yearsへの参画
ジョン・ムラニーは、2024年5月にパット・コーコランが立ち上げたノンアルコールブランド「Years」の共同オーナー兼スポークスマンとなった。ムラニーはブランドの初期クリエイティブ・キャンペーンにも参加しており、ノンアルコールを“断酒の代替”としてだけでなく、ユーモアと楽しさを持ち込み「汚名を払拭する」役割を目指す。Yearsは中西部、西海岸、テキサスで展開しており、ピルスナー、ペールエール、ウィットビールの三種を揃えて拡大を図っている。
セレブ参入の意味と市場力学
セレブが支援するブランドは市場平均を上回る傾向があり、著名人の関与は消費者にとって購入の指針となる場合がある。IWSRのデータでは、セレブ・ブランドはカテゴリーが成長段階にあるときに特に成功しやすいとされる。ノンアルコール市場は今後の拡大が見込まれており、同市場の規模は「今後約200億円に達する」との見通しや、IWSRの試算で「2028年までに50億ドルに達する」との予測が示されている。ノンアルコールビールが数量面で牽引役になるとの見立てもある。
競合と広がる領域
セレブ参与はシーンやムラニーにとどまらず、トム・ホランドやケイティ・ペリーらもノンアルコールや低アルコール飲料分野に関与している。カテゴリー内では、ノンアルコールビールのほかスプリッツァーやスピリッツ代替品など多様な製品が登場しており、ブランドや著名人の参入で競争と注目が一層激しくなっている。
有名人ブランドは知名度や即時的な関心をもたらすが、成功の鍵はタイミングとカテゴリーの成熟度である。短期的な話題性のみならず、品質、流通、消費者ニーズへの適合といった実務面の整備が不可欠である。断酒や節酒を選ぶ消費者の増加という構造的な需要を背景に、セレブ主導ブランドが市場をどう拡大し、持続的な支持を得るかが今後の焦点である。(出典:MARKETING DIVE、画像:Wild AF , iStock)
















