リテールメディアとAIがデジタルコマースの未来を牽引する- WARC The Future of Digital Commerce
小売メディア、AI、オムニチャネル・マーケティング、クラウドベースのデータ・クリーンルームという4つの主要分野におけるeコマース動向に焦点を当てたWARCの新レポートによると、小売メディア広告費は2024年に全世界で1,533億ドルに達すると予測されている。これら4つの領域は、「急成長する複雑なこの領域の未来に多大な影響を及ぼしている」と、『デジタルコマースの未来』レポートの著者であるWARCデジタルコマースのグレゴリー・グルジンスキー氏は言う。本レポートは、将来がどうなるのか、そしてそのためにマーケターが今何をすべきかを包括的に示している。
成長を続ける小売メディア
小売メディアへの投資額は2024年には13.7%増加し、2025年には10.6%に減速すると予測される。WARCの予測によると、アマゾンの支配は続いており、2024年には25%近い成長を維持して527億ドルに達し、小売メディア広告費の世界シェアは37.3%になるという。中国を除くと、これは小売メディア広告費全体の62.3%に相当する。Eコマース・プラットフォームのTemuも所有する中国のプラットフォームPinduoduoは、今年+31.3%拡大して282億ドルを稼ぎ出し、中国の全小売メディア支出の45.9%を占めることになる。一方、ウォルマートは最新の決算で、Eコマース広告収入が前年比26%増となったと報告している。
AIがマーケティングに革命を起こす
InsightAce Analytic社のデータによると、AIを活用したeコマース市場は2030年までに168億ドルに達し、今後7年間の年間平均成長率(CAGR)は15.7%で成長すると予測されている。このテクノロジーは、eコマース戦略の中核的な要素になると考えられており、ブランドは、商品、プロモーション、マーケティング活動をかつてないレベルでパーソナライズできるようになる。AIを活用したツールは、買い物客の共通点を特定し、商品詳細ページのカスタマイズ、ソーシャルメディアへの投稿、ロイヤルティプログラムの勧誘など、共通点をターゲットにしたアクティベーションを行うことができる。
同時に、人物、製品、パッケージのリアルな画像や超リアルな画像を素早くレンダリングできる能力は、クリエイターにとって強力なツールとなり、戦略的なプランニングやクリエイティブな思考により多くの時間を割くことができるようになる。
オムニチャネルの状況は変わりつつある
オムニチャネル領域はますます複雑化しているが、効果的なオムニチャネル顧客エンゲージメント戦略を持つブランドは、平均89%の顧客を維持している。Invesp社によると、オムニチャネルの顧客エンゲージメントが弱い企業の場合、この割合は33%に低下する。このような戦略の重要性は、今年初め、クローガー社のロドニー・マクマレンCEOが決算説明会で語ったところによると、「店舗とオンラインの両方で買い物をする顧客は、店舗のみで買い物をする顧客に比べ、3~4倍多く消費する」のだという。
今後12ヶ月から24ヶ月の間に、オムニチャネル・マーケターにとっての多くの課題は、測定と最適化を中心に据えることになるだろう。WARCの「Future of Measurement 2024」レポートに掲載された調査によると、計測のベストプラクティスに従っているマーケターはごく一部で、22%はアトリビューション・モデリングをまったく行っていないと回答している。
測定とプライバシーが「クリーンルーム」導入を促進し続ける
CMOカウンシルの調査によると、北米のマーケティング担当者の54%が、データクリーンルーム戦略(データクリーンルームとは、ブランドが匿名化されたショッパーデータにアクセスし、小売業者とブランドが協力して価値の高い顧客セグメントを作成し、ターゲットを絞ることができる環境)の主要な推進力として、キャンペーンの結果を測定する能力を挙げている。広範なファーストパーティデータを持たないブランドは、クリーンルームの機能をメディアアトリビューションに限定する必要があるかもしれない。
(出典:「The Future of Digital Commerce」レポート)