AI時代の旅行プラットフォーム戦略—AirbnbチェスキーCEOが語る「遅いAI開発」の意味

AI時代でも「慎重な開発」が競争力になる

宿泊予約サービスを展開するAirbnbのCEOであるブライアン・チェスキーは、AI開発を急ぐ競合が多い中で、同社はあえて慎重なアプローチを採用していると説明している。AIの導入が加速する現在のテクノロジー環境では、スピードを重視する企業が多いが、同氏は「時間をかけて着実に構築する戦略こそが最終的な勝利につながる」との考えを示した。
一部ではAirbnbのAI開発が遅れているとの見方もあるが、チェスキーCEOはこれを否定する。自社独自のAI基盤を構築することが、仲介型プラットフォームとして生き残るための最も強力な防御策になるという認識を示した。また、AIプラットフォームの台頭が予約サイトの存在を脅かすのではないかという議論にも触れ、既存のアプリに急いでチャットボットを組み込んでいる競合企業を批判した。
Airbnbでは、AIの活用を顧客サポートの改善から開始したという。同社のAIシステムはすでに問い合わせの約3分の1を人の介入なしで解決できるようになっており、運用面での効率化が進んでいる。

Airbnbが持つデータ資産とプラットフォームの強み

チェスキーCEOは、一般的なAIチャットボットではAirbnbの持つ独自資産を再現できないと指摘する。同社は約2億人の認証済みユーザーIDを保有し、さらに5億件に及ぶレビュー(クチコミ)データを蓄積している。また、宿泊者の約90%がホストとのメッセージ機能を利用しているなど、独自のコミュニケーション基盤も整備されている。
さらに、Airbnbのサービスは単なる検索・予約機能にとどまらない。グローバル決済、カスタマーサポート、保険などを含む旅行体験全体が統合されており、これらの要素がAIと結びつくことで独自のプラットフォームが形成される。チェスキーCEOは、こうした統合的な仕組みこそが他社には模倣しにくい競争優位性になると強調した。
また、同社の分析によれば、AIプラットフォーム経由の訪問者は、検索エンジン経由のユーザーよりも予約に至る割合が高い傾向が確認されているという。例えばChatGPT、Gemini、ClaudeといったAIサービスからの流入は、従来の検索エンジンであるGoogle経由よりも成約率が高いと説明した。
ただしチェスキーCEOは、これらのAIモデルは特定企業に独占されるプラットフォームではないと指摘する。Airbnb自身も同様のAI技術を活用できるため、最終的な競争力を決めるのは旅行分野における専門性とデータの蓄積であるとの見方を示した。

AI人材の強化とホテル戦略の更新

AirbnbはAI開発体制の強化にも乗り出している。2026年1月には、MetaでAI部門の責任者を務めていたアフマド・アル=ダレを最高技術責任者(CTO)として迎え入れた。これは、同社が大規模なAI体験の構築とサービス変革を進めていく意思を示す人事と位置づけられている。
さらにチェスキーCEOは、2026年後半にホテル事業に関する新しい戦略を公表する予定があることにも言及した。Airbnbは従来のバケーションレンタルに加え、ホテル、体験プログラム、各種サービスを組み合わせた「マルチプロダクト」戦略を推進している。
旅行者の行動は必ずしも単線的ではない。まず体験プログラムやサービスを予約し、その後に宿泊先としてバケーションレンタルを探す場合もある。あるいは出張でホテルを利用した後、家族旅行のために再びバケーションレンタルを探すケースもある。こうした旅行の各段階が互いに補完し合うことで、サービス全体の利用機会が広がるという考え方である。

業績は成長、投資拡大で利益は減少

Airbnbの業績を見ると、2025年第4四半期は過去2年間で最も高い成長を記録した。売上高は前年同期比12%増の28億ドルに達した。一方で純利益は3億4100万ドルとなり、前年同期比で26%減少した。
同社によれば、利益減少の主な要因は新規事業や技術開発への投資拡大であり、加えて約9000万ドルの税務関連以外の特別要因が影響したという。
予約件数と宿泊数は、バケーションレンタル、ホテル、体験、サービスを含めて前年比10%増加した。また事業拡大の成果として、ブラジル、日本、インドなどの国際市場で成長が見られるとチェスキーCEOは説明している。
なお2026年第1四半期については、売上高の成長率が14〜16%になると予測している。AIと旅行サービスの融合を進めるAirbnbの戦略は、今後の観光プラットフォーム競争の方向性を示すものとして注目されている。(出典:travel voice、画像:Unsplash)

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