中国市場は減速するも、世界のラグジュアリー市場は堅調を維持

ベイン・アンド・カンパニーがイタリア高級ブランド協会アルタガンマと共同で発表した「2025年ラグジュアリー市場レポート」によると、2025年の世界のラグジュアリー市場は、経済環境の不透明感や主要市場である中国の減速にもかかわらず、総消費額約1兆4,400億ユーロと前年並みの規模を維持した。

一方で、中国市場は最大5%の減少が見込まれており、かつてパンデミック前には世界の高級品消費のほぼ半分を占めると予測されていた成長軌道からは明確に修正が入っている。ただし、この減速は単なる需要後退ではなく、構造変化を伴うものと位置づけられている。現地ブランドが消費者理解を深めつつ「ラグジュアリー入門」領域へ参入することで競争が激化し、市場の成熟が進んでいるためである。

「見せる贅沢」から「感じる贅沢」への重心移動

世界のラグジュアリー市場では、Z世代の価値観やライフスタイルの影響を受け、従来のステータス誇示型消費から、体験や感情を重視する消費へと重心が移りつつある。高級ホテル、クルーズ、高級レストラン、ウェルネスといった分野がその象徴である。

ベインのグローバルファッション&ラグジュアリー部門責任者クラウディア・ダルピジオは、「購買熱狂の時代を経て、体験と感情がラグジュアリー成長の真の原動力となった」と指摘する。今後は量的拡大よりも質を重視する段階に入り、出店戦略においても数を絞った高影響力立地が優先され、より洗練された体験主導型モデルへの移行が進むと分析している。

カテゴリー別に見ると、高級個人用品は依然として総支出の約4分の1を占め、約3,600億ユーロ規模を維持している。一方で、高級宿泊施設は約2,500億ユーロ規模で5%成長し、グルメ食品・高級外食は7%増と堅調である。後者は2019年以降で約40%成長し、750億ユーロ規模に達した。最高級クルーズ分野では前年に10%超の成長が見られた。

商品カテゴリーと地域に見る成長の次の担い手

個人向け高級品の中では、ジュエリーが最も顕著な成長カテゴリーとなり、カスタマイズ性の高さや感情的価値への訴求を背景に最大6%の増加を記録した。フレグランス、とりわけ男性用香水は引き続き人気を保ち、アイウェアもデザイン革新やデジタル統合、汎用性の向上によって最大4%の成長を遂げている。

地域別では、日本市場は観光需要の鈍化により減速傾向にあるものの、国内需要と限定商品への志向によって一定の安定を維持している。中国の中産階級が消費に慎重姿勢を強める一方で、東南アジアでは若年層を中心に需要が拡大し、その減速を部分的に補っている。

現在、東南アジアはインド、アフリカ、そして最も好調な中東地域と合わせて、約450億ユーロ規模の市場を形成しており、中国本土と同水準に達している。ベインは、来年以降、中国経済の着実な回復が進めば、世界全体のラグジュアリー市場は最大5%の成長が見込まれるとしている。

長期的には、2035年までに市場規模は最大2.7兆ユーロへ拡大し、そのうち個人向け商品の支出は最大6,250億ユーロに達するとの予測も示された。今後5年間で3億人以上の新規消費者が市場に参入する見通しであることを踏まえ、同社はこの成長シナリオを現実的だと評価している。

ダルピジオは「ラグジュアリーは今、岐路に立っている」と結論づける。倫理性、包摂性、真実性を軸に再定義を進めるのか、それともエリート主義へ後退するのか。娯楽、感情、倫理を価値の源泉とし、利益と目的、創造性と良心を両立できるブランドこそが、次の時代の勝者となるという見立てである。(出典:Bain & Company他)

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