
ナイキが “Just Do It “のスローガンを変更― 新キャンペーン「Why Do It?」
ナイキは40年近く使用してきたスローガン「Just Do It」を問いかけの形に変え、新たなキャンペーン「Why Do It?」を展開した。若い世代のアスリートに向け、勝利や偉大さは必然ではなく選択によって形づくられることを訴える。
キャンペーンの概要
このプロジェクトはWieden+Kennedyポートランドが制作し、9月4日に始動した。バスケットボール、フットボール、野球、サッカー、テニス、ダイビング、陸上競技など、多様なスポーツの選手が登場する。ケイトリン・クラーク、カルロス・アルカラズ、サクオン・バークリー、レブロン・ジェームズ、レイサ・レアル、鄭琴文らがそれぞれの目的と葛藤を語り、「なぜそれをするのか」という問いに挑む。ナレーションはタイラー・ザ・クリエイターが務めた。
メッセージの核心
ナイキのCMOであるニコール・グラハムは「若い世代は完璧主義や比較のプレッシャーに苦しんでいる」と指摘する。本映像は勝利そのものではなく、挑戦の瞬間を捉え、疑念を乗り越えて実行することに価値があると強調する。「Why Do It?」は、行動そのものがすべての始まりであり、結果はその後に続くという思想を表現している。
文化と共に進化するキャッチコピー
「Just Do It」は1988年に登場して以来、スポーツの普遍性を伝える象徴的フレーズとなった。80歳のランナー、ウォルト・スタックを起用した初期広告に始まり、1995年の「If You Let Me Play」では少女たちへのメッセージを強化。2018年の「Dream Crazy」ではコリン・キャパニックを起用し、社会正義への姿勢を打ち出した。マイケル・ジョーダンやセリーナ・ウィリアムズら伝説的アスリートが体現してきたのも、「行動が可能性を拓く」という信念である。
存在意義の再確立
近年、ナイキは売上減少やブランド価値低下に直面していた。アディダスや新興ブランド「オン」「ホカ」などとの競争も激化していた。2023年以降、グラハムのCMO復帰やエリオット・ヒルのCEO再登板を通じて、ブランドの存在意義を再構築する取り組みが進められている。
2025年度の売上が前年より10%減少したことを受け、ナイキは「スポーツ・オフェンス」戦略を導入。ライフスタイル重視からスポーツ・パフォーマンスへと焦点を移した。事業部門もスポーツごとに再編し、オリンピックやスーパーボウルなどの大舞台でスポーツ特化のストーリーテリングを強化している。
最新キャンペーンは「勝利や偉大さは選択によって築かれる」と訴える。ナイキは再びスポーツの本質に立ち返り、アスリートや消費者に「挑戦する理由」を問いかけている。これは単なる広告の刷新ではなく、ブランドが歩むべき新たな道筋を示す試みである。(出典・画像:NIKE, AdWeek)