
アセンブリーとADKグローバルが統合─CEOが語る、APAC戦略とブランドの未来
アセンブリーとADKグローバルは、2025年7月、両社の統合を正式に発表した。これは、スタッグウェルによるADKグローバルの先行買収に続く動きであり、急成長を遂げるアジア太平洋市場において、統合的なマーケティングソリューションを提供する新体制の確立を意味する。
両社の強みを結集した新たな組織「ADK GLOBAL Powered by Assembly」は、グローバルなスケールと地域に根ざした専門性を兼ね備えた統合ブランドとして始動した。メディア、クリエイティブ、データ、テクノロジーにわたる広範なソリューションを提供し、文化的関連性と成果重視のブランド体験の両立を目指す。
アセンブリーAPACのCEOであるリチャード・ブロスギル氏は、「これは単なる地域展開の強化ではなく、APACにおける統合型マーケティングの再定義である」と語る。
多様性の中で進化する統合戦略
アジア太平洋地域は、文化的にも市場構造的にも極めて多様であるが、それゆえに今回の統合は重要な意味を持つとブロスギル氏は強調する。「私たちはすでに主要市場で緊密に連携してきた実績がある。今回の統合は、その実績を拡張し、さらなる可能性を引き出す取り組みだ」と述べる。
同氏は、ブランドが単に「何を語るか」だけでなく、「いつ、どこで、どのように語るか」が重要な時代において、メディアとクリエイティブの連携が不可欠であると指摘する。「リーチだけでなく、文化的共鳴が求められている。プラットフォームや接触の瞬間に応じた、感情に訴える体験こそが真の価値を生む」と語る。
ブランド構築とパフォーマンスを結びつける
統合ブランド・パフォーマンス・マーケティングという概念のもと、同社はブランド構築の力と、パフォーマンスマーケティングの精緻さを融合させていく。「すべての消費者接点が目的を持ち、一貫性があり、短期的な成果と長期的なブランド価値の両立を図るものに進化すべきだ」とブロスギル氏は述べる。
ブランドに対する親近感とエンゲージメントが高まれば、コンバージョンは自然な結果として発生する。アジア太平洋のようにデジタルが飽和し、多様性に富んだ市場では、文脈と感情的共鳴を伴って適切なタイミングでブランドが現れることが不可欠である。
テクノロジーとAIが支える次世代のマーケティング基盤
アセンブリーが開発・運用する独自のプラットフォーム「STAGE」は、同社の技術力と統合マーケティングの中核を担う存在である。最新のSTAGE AIやローカルパブリッシャーとのデータ統合により、分析の速度と精度が向上し、意思決定の質も大きく高まっている。
「STAGEは単なる分析ツールではなく、エクスペリエンスエンジンとして、マーケティング全体を設計・強化する力を持つ。複雑な市場環境を明瞭にし、真に価値あるインサイトを提供する」とブロスギル氏は語る。
ADKグローバルのクライアントにとっても、STAGEは創造性の効果検証や高度な測定・分析を通じて、パフォーマンスの最大化を支援する基盤となる。
APAC戦略における中心的役割
アジア太平洋地域は、アセンブリーおよびADKグローバル、さらにスタッグウェルにとっても成長戦略の重要な柱である。急速な市場成長とデジタルシフトに加え、グローバルブランドとローカルブランドの両立が求められるこの地域では、柔軟で文化的適応力を持つネットワークが必要とされている。
「この統合は、“大きすぎず小さすぎない”最適なスケールで、グローバルな視野とローカルな敏捷性を兼ね備えたモデルである」と同氏は述べる。
組織文化と人材融合への取り組み
2つの異なるエージェンシーの融合において、文化的な結束力の構築もまた重要なテーマである。ブロスギル氏は、「私たちは相互補完的な関係であり、どちらかを上書きするのではなく、お互いの強みを高め合うことを目指している」と強調する。
「我々が共有する価値観──現れ、変化を生み出し、勝利を収める──は、ADKグローバルの精神と深く共鳴している」と語り、共通のビジョンに向けてチームを束ねている。新たな発想や視点を歓迎し、イノベーションの原動力として活用する柔軟な姿勢も、この統合の成功に向けた鍵となっている。
未来を見据えた差別化と成長の機会
APACにおける今後の成長と差別化において、最も重要な要素は「統合されたブランド体験の提供」であるとブロスギル氏は考えている。
「私たちは規模だけでなく、深さと価値を追求している。業界が効率化やコスト削減に偏る中、我々は意図的に異なるモデルを選択し、クリエイティブとメディア、テクノロジーを融合させることで、ブランドにとって本質的な価値を創出する」と述べる。
アジア太平洋におけるチャレンジャー・ネットワークとして、アセンブリーとADKグローバルの統合は、文化的共鳴、迅速な対応力、データとテクノロジーによる成果創出を武器に、次なる成長の波を主導する存在であり続けるだろう。
「私たちは単に違いを尊重するだけでなく、それをデザインし、拡張していく。それこそが、真に進化するブランドの姿である」と、ブロスギル氏は締めくくった。(出展:branding in asia、画像:ADK)