
イケア、「家庭の不都合」を“デザインの機会”に変える新キャンペーンを開始
「なぜ修理するのか?イケアがあれば、もっとスマートな解決がある」――そんな問いかけから始まるイケアの最新キャンペーン「DIY by IKEA」が、中東・北アフリカ地域で展開されている。
このキャンペーンは、VML UKが手がけたもので、イケアの手頃な価格で機能的な製品が、住宅のちょっとした問題をいかに簡単に、しかもスタイリッシュに解決できるかをユーモアを交えて紹介している。ビフォー・アフター形式の大胆なビジュアルを用い、ちょっとした工夫で住まいが見違えるように変わる様子を描いている。
日常の「不具合」をデザインのアイデアに
キャンペーンは住宅改修のコストが上昇する中で、イケアのソリューションがその代替となることを示している。地域全体では、今後1年以内に建築資材の価格が10〜15%上昇するとの見通しがあり、住宅改修費用もすでに5〜10%の増加傾向にあるとされる。
イケアのマーケティング、コミュニケーション、HF、リテールデザイン担当ゼネラルマネージャーであるカーラ・クルンペナー氏は次のように語る。「イケアは、誰もが手の届く価格で美しいデザインを提供することを使命としています。今回のキャンペーンは、数百ドル、時には数千ドルかかるような家の修理を、最小限の出費で、しかも洗練された方法で実現できることを伝えるものです」
チャネル横断型のミニマル・アプローチ
「DIY by IKEA」は、映像、屋外広告、印刷物など複数のチャネルで展開され、統一されたミニマリストの美学が貫かれている。戦略的には、YouTubeでのDIY動画に表示されるプレロール広告を通じ、実際に修繕を考えている住宅所有者の意思決定タイミングに合わせてメッセージを届ける工夫も行われている。
VML UKのエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター、ジュリアナ・パラセンシオ氏は「イケアは常に高いクリエイティブ基準を維持してきましたが、今回のキャンペーンはその伝統を受け継ぎつつ、生活費の高騰という現実に即した真のインサイトを捉えたものです。シンプルで、ありのままにイケアらしい」と評価している。
「高額な修理」に代わる選択肢を提示
このキャンペーンは、住まいに関する課題に対して、必ずしも高額なリノベーションを必要としないというメッセージを発信しており、「手の届く修理」や「創意ある解決策」を提案する、いわばホームセンターの常識を覆す動きでもある。
イケアは、生活のなかに潜む“不便さ”を、発想の転換によって「心地よい空間」へと変えるブランドとして、これまでの信頼をさらに強固なものにしようとしている。今回の「DIY by IKEA」キャンペーンは、その姿勢を新たな切り口で伝える試みである。(出典:IKEA, Branding in Asia他)