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UK:バーバリーの新戦略:原点回帰で成長を模索

バーバリーは新たな成長を目指し、ブランドのルーツに立ち返る戦略を打ち出した。この方針は、新最高経営責任者(CEO)ジョシュア・シュルマン氏が進めるもので、従来の「ブランド・エレベーション」戦略からの転換を図るものだ。

シュルマン氏は、バーバリーの伝統的な製品であるトレンチコートやスカーフに注力し、価格を調整することでブランドの競争力を高める考えだ。近年の奇抜で高額な製品が販売不振に陥り、上半期の売上が前年比で20%減少したことが、この方向転換の背景にある。

「レインウェア」などの実用的な商品は、不況期でも安定した需要があり、英国らしさを強調したキャンペーンも成功を収めた。また、ソーシャルメディア上での評価も向上しており、バーンスタインのブランド・ヒート・オブザーバトリーによると、2023年第3四半期には最も上昇したブランドに選ばれている。

課題とリスク

シュルマン氏の戦略は、過剰在庫の一掃や値引きを通じた損失の抑制を目指すものだが、ブランドが抱える課題は依然として残っている。

  • 収益性の課題:売れ残り商品の値引きによる損失や在庫削減のコストが利益率を圧迫している。2023年には売上総利益率が前年比で6.4ポイント低下しており、フルプライス商品への依存がブランドの持続可能性に影響を与えている。
  • 成長の限界:バーバリーの高級コートやスカーフの市場規模は限られており、競合するエルメスやLVMHのような超高級ブランドとの比較で、店舗あたりの売上や市場規模の拡大には限界があるとされている。
  • 流通戦略の再構築:高級アウターウェアに特化したブランドとして、適切な店舗網の規模や配置を見直す必要がある。高額商品を扱うラグジュアリーブランドにとって、一等地の確保が競争の鍵となる中、効率的な流通戦略が求められる。

成長への可能性

バーバリーは、高級レザー、カシミア、テクニカルギアといった新しいカテゴリーへの進出を模索している。シュルマン氏は、時間をかけて売上高をピーク時の30億ポンド、すなわち今年予想される売上高の4分の3水準まで回復させることを目標としている。イタリアのモンクレールがパフジャケットで成功を収めたように、バーバリーも高級アウターウェア市場の枠を広げることで成長の可能性を探る考えだ。

バーバリーの伝統的な価値観への回帰は、ブランドの一貫性と顧客基盤の再構築に寄与する可能性が高い。一方で、市場の拡大には限界があり、現在の戦略がブランドの成長をどこまで持続させるかは未知数である。シュルマン氏の方針は、ブランドの基盤を強化し、さらなる成長の道筋を模索する一歩である。しかし、この原点回帰がラグジュアリーブランドとしての未来をどのように形成するか、長期的な視点での検証が求められる。(出典:Financial Times, Luxury Daily他)

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