
LVMHとケリング、モデル保護の共同憲章を強化 年齢基準やハラスメント対策を厳格化
フランスの高級ブランド大手であるLVMHとケリングは、ファッション業界で働くモデルの安全と権利を守るため、2017年に共同で策定した憲章を改定した。性別に基づくハラスメントや性的暴力の防止、若年モデルの保護などを柱とし、従来よりも厳格な基準を導入する。新たな規則は次回のパリ・ファッションウィークから適用を開始し、2027年に正式発効する予定だ。
両社は今回の改定を通じて、モデルの保護を一時的な対策ではなく、ブランド、モデルエージェンシー、キャスティングディレクター、モデル本人を含む業界全体が共有すべき責任として位置づけている。
LVMHでイメージおよび環境部門を統括するアントワーヌ・アルノー氏は、モデルの保護は業界の関係者全員が取り組むべき課題であり、ファッション業界の慣行に持続的な変化をもたらすことが目標だと説明する。
ケリングでサステナビリティおよび機関事務部門を統括するマリー=クレール・ダヴェウ氏も、2017年の憲章策定によってモデルの保護と福祉に関する要件を定め、業界の変革を後押ししてきたと振り返る。そのうえで、約10年が経過した今、さらなる改善を進めることが両社の責任だと述べている。
今回の改定の根底にあるのは、ファッションを表現する人々の尊重、安全、尊厳は決して妥協できないという考え方である。両社は保護基準を引き上げることで、個別のブランドにとどまらず、業界全体の働き方や慣行の変革を促そうとしている。

成人モデルの年齢基準を引き上げ、ハラスメントを厳しく禁止
改定内容の大きな柱の1つは、ファッションショーや写真撮影で成人モデルとして起用される人の最低年齢を18歳とすることだ。ケリングがモデル保護への取り組みを強化するとともに、LVMHが2017年に定めた従来の最低年齢16歳から基準を引き上げるものである。
また、新憲章では、性別に基づくハラスメントやセクシュアルハラスメント、虐待、暴力など、あらゆる形態の行為に対してゼロ・トレランスの原則を明確にした。被害の防止と、モデルが安心して仕事に取り組める環境づくりを重視する姿勢を示している。
こうした基準を現場で実効性のあるものにするため、両社は包括的な行動計画も策定した。対象となるのは、キャスティングやファッションショー、写真撮影に携わるブランド、モデルエージェンシー、制作チームなどである。関係者向けの研修や啓発活動を実施し、憲章の内容と求められる行動について理解を深める。
裸体を伴う撮影の管理や相談体制、現場監査も強化
改定憲章では、撮影現場の監督体制も強化する。特に裸体を伴う場面について、モデルの権利と安全を守るためのルールを厳格化する方針だ。
部分的な裸体を含む撮影では、事前に正式な同意を得ることに加え、専用のスペースを確保するなど、モデルのプライバシーと尊厳に配慮した対応を求める。また、制作チームのメンバーがモデルを放任したり、適切な管理を行わなかったりすることを認めない方針を掲げている。
さらに、問題が発生した場合に利用できる、匿名性と安全性を確保した報告手順を整備するほか、予告なしの職場監査も実施する。規則を文書で定めるだけでなく、現場で守られているかを確認し、違反や不適切な対応を抑止する狙いがある。一方で、憲章はブランドごとの芸術的な自由を尊重する姿勢も維持している。そのうえで、人材の選定においては、包括性を確保し、差別を認めないという原則を改めて確認した。
今回の改定は、創造性や表現の自由を重視するファッション業界において、モデルの安全と尊厳を守るための共通基準を引き上げる取り組みである。LVMHとケリングは、年齢基準の見直しやハラスメント対策、現場監査を組み合わせることで、モデル保護を業界全体の継続的な責任として定着させることを目指している。(出典:FASHION NETWORK、画像:LVMH)
















