
トヨタが米国でEV戦略を加速 4つの広告会社と連携しキャンペーンを展開
トヨタ自動車が、米国市場で電気自動車(EV)を「特定層のための製品」ではなく、「誰もが利用できるクルマ」として再定義するため、大規模な統合マーケティングキャンペーンを開始した。今回の施策では4つの広告会社と連携し、異なるターゲット層に向けた多彩なクリエイティブを展開している。
背景には、燃料価格の高騰によってEVへの関心が再び高まっていることがある。同社のSUV型EV「bZ」は2026年第1四半期の販売台数が前年比78%増を記録。EVラインアップ全体でも3月の世界販売台数が前年同月比139%増となった。
多様なターゲットに向けたクリエイティブ戦略
今回のキャンペーンは、テレビCM、デジタル動画、SNS、オーディオ広告、体験型マーケティングなど複数チャネルを横断して展開される。特徴的なのは、「EV懐疑派」「小規模事業者」「アジア系アメリカ人」「ヒスパニック系コミュニティ」など、ターゲットごとに異なるメッセージと表現を用意している点である。
バレル・コミュニケーションズ・グループは、EVに否定的な人々を取り込むことを目的にした映像シリーズを制作。 ポール・ハンターが監督した「Haters Anthem」では、人形たちがEVへの不満を口にしながら運転するが、次第にEVへの理解を深め、人間へと変化していくというユニークな構成が採用された。
一方、サーチ・アンド・サーチは、EVを日常生活や仕事に活用するリアルな利用シーンを描いた。「Carista」では移動式コーヒーショップを営む事業者を主人公に据え、小規模ビジネスにおけるEVの可能性を訴求している。監督は トリスタン・ホームズが務めた。
今後数か月以内には、さらに地域・文化別のキャンペーンも始動する予定である。インタートレンド・コミュニケーションズは、 ジョセフ・カーンと協力し、アジア映画にインスピレーションを受けた30秒CMを4本制作。アジア系アメリカ人コミュニティへの訴求を狙う。
また、ヒスパニック系市場向けにはコニル・アドバタイジング が フェリックス&ポール・スタジオと連携し、実写とアニメーションを融合させた映像シリーズを展開する。
EV市場の変化とトヨタの狙い
米国では新車EV販売の勢いに一時的な減速も見られる一方、中古EV市場は拡大を続けており、3月の中古EV販売は前年同月比27.7%増となった。また、2025年に成立した「One Big Beautiful Bill Act」によって新車・中古EV向け税制優遇が終了したことも、市場環境に影響を与えている。
そうした中でトヨタは、EVを単なる先進技術としてではなく、「生活の現実的な選択肢」として浸透させようとしている。今回のキャンペーンは、従来の自動車広告よりも、ライフスタイルやコミュニティへの共感を重視した点に特徴がある。
EV市場が成熟段階へ移行する中で、性能や環境性能だけではなく、「誰に、どのような生活価値を提供するか」というブランド戦略が、競争力を左右する時代に入りつつある。(出典・画像:トヨタ自動車、Digital Marketing Dive)
















