コカ・コーラ、感情を軸にしたグローバル戦略の深化

コカ・コーラは、FIFAワールドカップ2026に向けた新たなキャンペーン「Uncanned Emotions」を始動した。これは、大会開幕前から展開される包括的なストーリーテリング施策の一環であり、既存のブランドフィルム「Bubbling Up」の流れを引き継ぐシリーズ構成となっている。
本キャンペーンの中核となる映像は、サッカーファン自身を主役に据え、試合観戦時に生まれる期待、歓喜、失望といった感情の揺らぎを描き出す内容である。制作はOgilvyが主導し、WPPの体制のもとで展開されている。さらに、実況にはピーター・ドリュリーとルイス・オマール・タピアを起用し、英語とスペイン語で臨場感のあるナレーションを実現している。
コカ・コーラは50年以上にわたりFIFAのパートナーを務めてきたが、本施策は単なる大会協賛の枠を超え、観戦体験全体に寄り添うブランドの存在感を再定義する試みである。

映像を超えた“体験”としてのキャンペーン設計

今回の取り組みは、映像コンテンツ単体にとどまらず、リアルとデジタルを横断する多層的な体験設計が特徴である。たとえば、FIFAワールドカップトロフィーツアーを通じてファンが実物のトロフィーに触れる機会を創出し、イベント参加そのものをブランド体験へと昇華させている。
また、パニーニとの協業により、紙とデジタル双方で楽しめるステッカーコレクションを展開。さらに、過去施策「Jump」のアレンジを取り入れたアンセムキャンペーンなど、複数のクリエイティブを連動させることで、長期的なエンゲージメントを設計している。
これらは単発的な露出ではなく、ブランド、パートナー、ファンが相互に関係し合う「エコシステム」として機能し、継続的な接点を生み出す構造となっている。今後も段階的にプロモーションが追加され、大会に向けた熱量を高めていく計画である。

グローバル共感を生むストーリーテリングの本質

コカ・コーラの戦略は、「感情」を軸とした普遍的な共感の創出にある。ワールドカップという巨大イベントは、国境や文化を越えて人々の感情を同期させる特異な場であり、同社はその瞬間に自然に溶け込むブランドであり続けることを目指している。
このアプローチは、いくつかの重要な示唆を含んでいる。第一に、実際のファンの行動や感情に基づいたストーリーテリングは、あらゆる市場において共感を得やすい。第二に、実況者のような「信頼できる声」を活用することで、演出過多に陥ることなくリアリティを担保できる。第三に、映像・体験・コレクタブルといった複数の接点を組み合わせることで、ブランド接触を長期化できる点である。
2026年大会は、世界で約60億人の視聴が見込まれており、その影響力は過去大会を上回ると予測されている。こうした巨大な舞台において、コカ・コーラは単なる広告主ではなく、感情を媒介とした“共通体験の一部”としてブランドを位置づけようとしているのである。(出典:DESIGNRUSH、画像:コカ・コーラ)

関連記事一覧