
「ティーンエイジャーになろうとするな」:リブランディングの落とし穴を避けるために
企業のリブランディングは慎重に行うべきものであり、時に過去の遺産を生かすことが大切である。多くの企業が「フレッシュで機敏なイメージ」を目指してリブランディングを試みるが、その多くは失敗に終わっている。ブランドは自らの価値を見失うことなく、現代的でありながらその遺産を維持することが求められる。
アバディーンの教訓
英国の資産運用会社アバディーン(Aberdeen:アバディーングループが2017年に行ったリブランディングでは、同社は「高度に差別化されたブランド」を作ることを目指して社名を変更し、母音を取り除いた新しい名前「ABDN:アバードン」を選択した。この変更は目立ったものの、間違った理由に基づいていたと広く批判され、その結果、誤った方向へ進んだことを示している。
アバディーンは、デジタル対応や現代的なイメージを求めたが、ブランドの本質を捨てることは逆効果だったとされる。このような急激な変化により、ブランドは「認知的不協和」を引き起こし、消費者の信頼を損ねることになった。コンサルタント会社Park & Batteryのマイケル・ルビー社長は、「アバディーンは、革新的なフィンテック企業のように見せようとしたが、その結果として逆効果を生んだ」と分析している。
ブランドの一貫性とアイデンティティ
ブランドが自らの本質を失い、他の企業と同じようなものになろうとすることは致命的である。ブランドのアイデンティティは、消費者にとって一貫性と信頼を提供するものであり、変更を加える場合でも、その核心を守りつつ変化を進める必要がある。ブランドは「ティーンエイジャーになろうとするな」という教訓を学ぶべきだ。
ブランドの一貫性は、特に歴史を重んじる企業にとって重要だ。伝統を守りながらも未来に向けて進むことが求められる。企業がその歴史的な背景をどのように現代に活かすかが、リブランディング成功の鍵となる。
成功と失敗の差
リブランディングが成功するためには、ブランドが自らの遺産を理解し、その遺産に基づいた方向性を打ち出すことが必要だ。成功した例として、ピクテやUBSのような金融サービスブランドが挙げられる。これらのブランドは、慎重に自らのスタイルを守りながら現代的なアプローチを取り入れており、長期的に信頼を築いている。
一方で、リブランディングを行ったものの、失敗した例も存在する。例えば、2001年にロイヤル・メールが「コンシグニア」に社名を変更し、わずか1年後に撤回した事例や、2009年にノーウィッチ・ユニオンが「アヴィバ」に改名したものの、消費者からは混乱を招いた事例がある。これらの失敗は、リブランディングの背後にある動機や戦略が不十分だったために起こった。
リブランドにはリスクが伴う
リブランディングには大きなリスクが伴う。特に、ブランドの名前やアイデンティティを変更する際には、消費者に混乱を与え、長期的にコストがかかる可能性がある。アバディーンの例のように、失敗すると再度のリネームが必要となり、その結果、ブランドに対する消費者の信頼を失うことになる。したがって、リブランディングを行う際は、顧客や市場のニーズを十分に理解し、ブランドの本質を保ちながら、適切なタイミングと方法で進める必要がある。
企業のリブランディングは、慎重に進めるべきであり、ブランドの本質を理解した上で行うべきである。過去の成功や価値を尊重しながら、現代のニーズに対応した変革を進めることが求められる。リブランディングの背後には、企業の未来に対するビジョンが必要であり、失敗を避けるために一貫した戦略と計画が必要不可欠である。(出典:Aberdeen Group, FT他)