
「オーラ」の衰えに直面するアメリカン・ブランド
アメリカのブランドは、長年自国の輝きを世界に放ち続けてきた。しかし現在、国際社会の政治的・文化的な複雑さの中で、より困難な適応を迫られている。
ブランドUSAの重要性と変化の兆し
ブランド・ファイナンスの「グローバル・ソフトパワー・インデックス」では米国が依然として首位に立ち、ソフトパワーの影響力を維持している。しかし、変化の兆候も表れている。モーニング・コンサルタントの6月の調査では、米国に対する国際的評価が低下する一方、中国に対する好感度が上昇していることが明らかになった。
この流れは、多国籍企業に新たなリスクをもたらす。強固な同盟国である英国においても反米感情が広がれば、アメリカ発ブランドにとって売上減少につながる可能性がある。さらに、大手フランチャイズ企業は、ローカルブランドや地域性に根差した嗜好へのシフトを余儀なくされるかもしれない。
現地化戦略の強化
マクドナルドやコカ・コーラといったグローバルブランドは、依然として堅調な売上を維持する傾向がある。ただし、今後は一層の現地化が求められる。商品開発からマーケティング施策に至るまで、各市場に寄り添った戦術が欠かせない。
マクドナルドのクリス・ケンプジンスキーCEOはCNBCに対し「アメリカを取り巻くオーラは以前より薄れている」と語り、100以上の国・地域でブランドを展開する現在、地域ごとのアイデンティティ構築に注力していると説明した。
政策リスクと反発の連鎖
一方、英国メディアはリーバイスの財務書類に記されたリスク要因に注目した。そこには「米国の関税政策や政権の対応が原因で反米感情が強まり、英国市場での売上に影響する可能性」が明記されていた。実際には半期で売上高8.8%増、税引前利益23%増と業績は堅調だったが、それでも政治リスクは無視できない。
さらに、中東・北アフリカ地域では、米国の対イスラエル支援を背景に米国ブランド製品に対するボイコットが発生し、フランチャイズ運営会社アメリカーナの純利益は約40%減少した。同社のモハメド・アラバー会長は「この状況が中東発ブランドの育成や買収の必要性を改めて認識させた」と語っている。
アメリカのブランドは世界的な影響力を維持しているが、その「オーラ」は以前ほど一枚岩ではない。国際世論の変化、政治的リスク、そして地域的な文化や嗜好の多様化に直面するなか、今後は「現地性」を取り入れた戦略が成否を分ける。ノスタルジーや伝統に依存するのではなく、地域社会に溶け込み共感を生むブランド体験をいかに提供できるかが、今後の最大の課題となるだろう。(出典:WARC, Brand Finance, Bloomberg, Modaes, FT)