
2年後、エージェンシー業界は大きく変貌する
2025年は広告代理店の世界にとって激動の年であった。オムニコムによるインターパブリックの買収計画発表を皮切りに、業績格差が拡大。結果としてWPPのマーク・リードCEOは利益警告を受け、予定よりも早く退任し、電通は国際事業売却の可能性を探るため2社の投資銀行を起用した。これらの出来事は、業界再編の加速を示す象徴的な動きにすぎない。
歴史を振り返ると、「数十年間何も起こらない時期があり、数週間で数十年分の出来事が起こる」と表現されることがある。広告代理店業界もまさにその状況にあり、2027年には現在とは大きく異なる構造に移行している可能性が高い。その原動力となるのはAIであり、広告制作やキャンペーン運用の在り方をすでに変え始めている。
報酬モデルの変化
AIが広告制作の多くを、ほんの短時間で効率的に行えるようになることで、従来の「時間単価」や「コストプラス型」に基づく報酬モデルは合理性を失い、形骸化せざるを得ない。紛れもなくエージェンシーは今後、成果やアウトプットに基づく報酬体系へと移行していくだろう。これは単なる形式的変更にとどまらず、業界全体の収益構造を根本から変える可能性を秘めている。
過去、大手ホールディンググループの台頭は、コミッション方式からコストプラス方式への転換と重なっていた。同様に、AIによる新たな転換は中堅エージェンシーを中心に統合を促し、業界構造の再編を一層進めるだろう。
今後の統合と再編
将来的には、ピュブリシス、オムニコム、インターパブリックといった大手のさらなる合併も視野に入る。一方、その他のプレイヤーは自らの立ち位置を明確にし、戦略的選択を迫られることになる。
ただし、この変化は単なる危機ではなく、業界が現行モデルをより持続可能で合理的な形に再調整する好機でもある。AIがもたらす効率化と成果ベースのモデルは、クライアントへの透明性を高め、代理店と広告主の関係を新しい次元に引き上げる可能性を持っている。(出典:Campaign AP)