MLB、データと自動化でファンコミュニケーションを高度化 個別最適化マーケティングへ

アドビとの提携拡大で“ファンごとの体験設計”を実現

メジャーリーグベースボールは、アドビとのパートナーシップを拡張し、リーグおよび全30球団におけるマーケティングの高度化に踏み出した。狙いは、データと自動化を活用し、ファン一人ひとりの観戦スタイルに応じたコミュニケーションを大規模に実現することである。
新機能は今シーズンから段階的に導入され、各球団は保有する詳細なファンデータを活用したターゲティングが可能となる。例えば、過去数年にわたり特定のテーマ試合を観戦してきたファンには、それに関連したビジュアル付きメールを配信し、特定の選手を支持するファンには、その選手に焦点を当てたメッセージを送るといった個別対応が実現する。
MLB側は、データ基盤の整備自体はもはや障壁ではなく、むしろ「どのようなコンテンツを、どのデータと組み合わせて届けるか」が課題であると位置づけている。

AIとクリエイティブ自動化が支える新たな運用体制

今回の取り組みは、2021年に締結されたデータ強化中心の協業を基盤としている。新たに、アドビのマーケティングおよび生成AI関連ツール群へのアクセスが拡大された。具体的には、パフォーマンスマーケティングを支援する「GenStudio」、クリエイティブ制作・管理を担う「Firefly Services」、さらにAI検索環境におけるブランド可視性を高める「LLM Optimizer」などが含まれる。
これにより、各球団のマーケティングチームは承認済みの素材や生成ツールを活用しながら、キャンペーン制作と承認プロセスを効率化できる。MLBはこれらの仕組みを“支援レイヤー”と位置づけ、現場の負担軽減と意思決定の迅速化を図ることで、より戦略的なファンエンゲージメント設計に集中できる環境を整えようとしている。

スポーツ体験の変化とAI時代の競争戦略

ソーシャルメディアや生成AIの普及により、ファンのスポーツとの関わり方は大きく変化している。試合観戦やハイライト視聴にとどまらず、独自のコンテンツ制作や情報探索、コミュニティ参加など、体験はよりインタラクティブなものへと進化している。
こうした環境の中でMLBは、TikTokとの提携などを通じ、グローバルでの接点拡大にも取り組んでいる。今後はアドビのツールを活用し、ファン自身が利用・共有できるコンテンツの提供も視野に入れている。
さらに、AI検索の影響力が増す中で、ブランドやチームがどのように表示されるかの管理も重要なテーマとなる。LLM Optimizerの導入により、チケット検索やチーム情報取得など、生成AI経由の接点においても、適切で最新の情報が提示されるよう最適化が進められる。
MLBの取り組みは、単なるマーケティング効率化にとどまらず、AI時代におけるスポーツビジネスの競争軸そのものを再定義する試みである。ファンとの関係性は、もはや一方向の情報発信ではなく、データと創造性を基盤とした双方向の体験設計へと移行しつつある。(出典:MARKETING DIVE)

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