
ルフトハンザ・グループ、ブランド統一へ大規模リニューアル─100周年に向けたデザイン刷新で一体感を強化
新ロゴ導入でグループ統一の世界観を再構築
ルフトハンザ・グループは現地時間12月11日、ブランドアイデンティティの大幅刷新を公表した。今後創業100周年を迎える2026年に向け、複数の航空会社を束ねる企業体から、より明確に統合された航空グループとしての存在感を示すことが狙いである。刷新の中心となるのは、ロゴ、書体、カラーパレットといった基礎デザインの全面見直しだ。
象徴である鶴のマークは、長らく使用されてきた円形の外枠を外し、単体で見せるシンプルな形に進化した。視認性の向上に加え、ブランドが目指す「より開かれた」イメージを反映したデザインだといえる。また、フォントはグループ全体で統一され、コーポレート表現の一貫性が強化された。新たに導入される6色のカラーパレットは、地上から上空までの高度をイメージしたもので、航空グループとしての普遍性と躍動感を視覚的に示す。
これらの変更は単なるデザインのアップデートではなく、グループ全体が共通のビジョンを共有し、顧客に一貫したブランド体験を提供するための再編と位置づけられる。各航空会社のブランドは独自性を保ちつつ、「Member of Lufthansa Group」という共通表示を機体に記載することで、統合ブランドとしての強いアイデンティティを構築する取り組みが進んでいる。
グループ全体の価値を最大化する“ブランドアーキテクチャ戦略”
今回の刷新の背景には、ルフトハンザ・グループが直面する市場環境の変化がある。欧州を中心に航空市場は競争が激化しており、複数ブランドを抱える航空グループが効率性と一体感を高めるためには、顧客接点の整理と統一が不可欠となっている。特に、航空会社の買収・統合が続く中で、グループとしての信頼性と透明性をいかに示すかが重要な経営課題になっている。
この文脈で、ビジュアル要素の統一はブランドアーキテクチャ戦略の基盤を形成する。“ブランドの統一感を強める”という表現の裏側には、運航、サービス、デジタルプラットフォームを含む多様な領域でグループとしての体験品質を標準化する意図がある。デジタル搭乗券やウェブサイトではすでに新デザインが広く導入され、160機以上の機体が新たなメッセージを掲げて運航している。今後はラウンジ、手荷物タグ、機内掲示など、物理的な接点へも適用範囲を広げ、すべてのタッチポイントでブランドの一体感を体験できる構造へ転換する方針だ。
こうした取り組みは、航空会社それぞれの独自性を残しつつ、グループ全体の資産価値を高める「ハウス・オブ・ブランド型」から「エンドース型」へと寄せる構造的な変化を示すものである。グループ名の可視化が進むほど、利用者は各ブランドをルフトハンザ・グループの品質保証の下にあるものとして理解しやすくなる。これは、価格競争に巻き込まれやすい航空業界において、ブランドの持続的価値を高める戦略といえる。



ブランド刷新は信頼の可視化という戦略的ステップ
ディーター・ブランクス最高商務責任者は今回の刷新について、「デザイン変更にとどまらず、グループに寄せられる信頼を視覚的に表現する戦略的な節目である」と説明している。乗客が接するあらゆる場面に共通のビジュアルが展開されることで、「このグループに乗れば一定の品質が担保されている」という安心感を醸成する狙いがある。
航空産業では、安全、運航品質、サービスといった要素は目に見えにくい領域で差別化されるため、ブランドが信頼性をどのように“形として見せるか”が競争力の鍵となる。ルフトハンザ・グループが今回の刷新で目指すのは、視覚的アイデンティティを通じてグループ全体の価値と方向性を明確にし、顧客の意思決定を支える信頼基盤を再強化することである。
こうした取り組みは、買収やネットワーク拡大を背景に航空グループの機能が複雑化する中で、その全体像を分かりやすく伝える役割も果たす。100周年を節目とした今回の取り組みは、単なる記念的措置ではなく、急速に変わる市場環境に対応するための中長期的なブランド戦略の一環といえる。(出典:Aviation Wire、画像:LUFTHANZA)
















