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「世界最高のロゴはタイポグラフィ」:2025年にフォントがこれまで以上に重要になる理由

大手フォントメーカーのMonotypeが発表した新レポート「Fonts, Feels, & Reels」は、Z世代からブーマー世代まで12,000人超のソーシャルメディアユーザーを対象に、フォントがアイデンティティ形成や感情的な結びつき、コンテンツ受容にどう影響するかを検証した調査である。タイポグラフィの力を当然視するデザイン業界の常識に対し、実際のユーザー視点からの定量・定性知見を提示した点に意義がある。

調査の骨子

本レポートは世代横断の“視覚言語”としてのフォント利用を分析し、とりわけ若年層が自己表現やコミュニティ形成の要にタイポグラフィを位置づけている実態を明らかにした。従来の「可読性」「アクセシビリティ」中心の議論にとどまらず、ユーザーの嗜好・感情反応を重視した設計思想を強調している。

主要知見:エンゲージメントと不満の両面

回答者の78%が「特徴的なフォントは投稿のエンゲージメントを高める」と認識している一方、Z世代とミレニアル世代ではプラットフォーム上のフォント選択肢の少なさへの不満が多数を占める。その結果、外部デザインツールを用いて“オフプラットフォーム”で投稿を作成する動きが広がり、こうした利用者の71%が「より多くのフォントを選べる/コントロールできるから」という理由を挙げている。

プラットフォームの課題:需要認識と提供不足

Monotypeのエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター、Tom Foley氏は、プラットフォーム側がタイポグラフィの文化的資産としての重要性とユーザー需要を十分に捉えきれていない可能性を指摘する。活字はスタイルや価値観のサインでありながら、研究や実装の優先度が低く、選択肢の拡充が遅れている点が課題である。

個人表現としてのタイポグラフィ

タイポグラフィは、断片化したソーシャル投稿全体に通底する“一本の糸”として、テイスト、文化的背景、意図、声のトーン、感情を凝縮して伝える。服装と同等、場合によってはそれ以上にダイレクトな自己表現として機能し、無言の説得力を持つ。専門領域にとどまっていた活字リテラシーはこの10~15年で主流化し、一般ユーザーの感度も高まっている。

メッセージ適合のアプローチ

フォントが伝えたい内容と一致しなければ機会損失が生じる。Foley氏は、技術的属性(セリフ/サンセリフ、ディスプレイ用/テキスト用)だけで判断するのではなく、「この書体は何を感じさせるか」という本能的・感情的反応を起点に選定することを提案する。とりわけパーソナルかつ表現性の高いブランドでは、感情インパクトとメッセージの結び付けが最良の指針となる。

なぜ2025年に重要性が増すのか

デジタルトランスフォーメーションの加速により、ブランドはソーシャル、ウェブ、グローバルな複数プラットフォームに同時に存在することが常態化した。この状況で、タイポグラフィは色やロゴ、サウンド以上に、全タッチポイントを横断して一貫性を担保しうる唯一の要素である。

強固なタイポグラフィ・アイデンティティは、色や形のみよりも素早く想起され、瞬時の識別を可能にする。世界で最も認知度の高いロゴがしばしばタイポグラフィである事実は、その普遍性と汎用性を物語る。

ロゴ、シンボル、キャラクターとの比較

シンボルやマスコットは強い連想を生むが、活字のようにすべての投稿、キャプション、動画へ無限に展開できるわけではない。タイポグラフィは媒体やフォーマットを問わず連続的に機能し、コミュニケーション全体を束ねる“骨格”となる。ゆえに誤ったフォント選択は損失を拡大し、適切な選択は比類なきリターンをもたらす。

フォントは関係インフラである

本レポートは、タイポグラフィがエンゲージメントを押し上げ、自己表現とブランド一貫性の中核として機能する現実を定量的に裏づけた。プラットフォームは選択肢の拡充と提供設計を、ブランドとクリエイターは感情反応を起点としたフォント選定と一貫運用を、それぞれ急ぐべきである。2025年、タイポグラフィは“デザインの一部”ではなく、“認知と関係性を司るインフラ”として再定義されるべきである。(出典:CREATIVE BLOQ、画像:Monotype)

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