
【Cannes Lions 2025】AIは広告代理店のパーティーを台無しにしない、オムニコムとIPGのCEOが語る
広告業界におけるAIの急速な進化に関して、オムニコムとインターパブリック・グループ(IPG)のCEOがそれぞれの見解を明かした。両社は今年、世界最大のエージェンシーを誕生させる133億ドルの合併に合意した。 カンヌライオンズ2025の会場で、オムニコムのジョン・レンCEOとIPGのフィリップ・クラコウスキーCEOは、業界の変革とAIの影響について議論した。
AIによるクリエイティブの変革
現在、AIは短いテキストや商品画像を基に動画広告を生成するツールとして登場しており、これにより広告制作が迅速かつ低コストで行えるようになった。この技術は、特に中小企業にとっては大きな価値を提供すると期待されているが、オムニコムやIPGのような大手広告代理店にとっては、AIの影響を受け入れることは簡単ではないという。
レンCEOは、「AIは、中小企業にとっては最大の価値を提供するだろう」とし、「しかし、大企業にとっては、AIが自社のイメージをどのように扱うかに対して多くの保証が求められる」と語った。大企業は、自社のブランド価値やイメージがAIのアルゴリズムに依存することに対して慎重な姿勢を崩さないだろうと述べた。
広告代理店の役割
レンとクラコウスキーは、AIが広告業界にとって脅威ではなく、むしろクリエイティブな人材にとって有用なツールであると主張している。クラコウスキーCEOは、「AIは創造的な人々がより迅速かつ低コストでアイデアをテストできる手助けをするだろう」と述べ、そのクリエイティブな力が広告主にとって不可欠であることを強調した。
また、レンCEOはAIの技術進化に対して楽観的な見方を示し、AIは従業員の雇用を脅かすものではなく、むしろ「多くの人々の仕事と生活を楽にするはずだ」と語った。業界は、AIを活用することで、広告制作やターゲティングの精度が向上し、従来の広告手法にとって代わる可能性があると期待されている。
メタとの競争
一方、メタ(旧Facebook)はAIを活用した新しいツールを発表し、広告制作の簡便さと、広告主に対して「ワンストップショップ」としての利便性を提供している。メタはAIによるターゲティング機能を強化し、広告主が自社のニーズに合ったオーディエンスに効率的にアプローチできるようにしている。
レンCEOは、メタが広告主に対して「今までのあらゆる問題を解決してくれる」と言ったが、このアプローチはオムニコムにとっても異なる視点で、AIを活用しつつも人間のクリエイティビティが重要であるという信念を維持している。
AIの影響と業界の未来
レンとクラコウスキーは、AIの進化が広告業界にどのように影響を与えるかについての不安も抱えながらも、広告代理店としての役割は今後も重要であると語った。AIによって広告制作は効率化され、消費者とのエンゲージメントを高めることが可能になるが、それでも人間のクリエイティビティと戦略的なマーケティングが不可欠であると強調している。
オムニコムとIPGは、AIの進化を受け入れつつ、広告主が依然として求める戦略的なブランド作りとクリエイティブなアプローチを提供し続ける必要があると考えている。両CEOは、AIをツールとして活用し、今後の広告業界での競争優位性を確立していく方針を示した。(出典:Business Week他)