APACのCMO、メディア戦略で未来を切り開く：電通のレポートが示す現状と課題

電通グループが発表した「2024年CMOナビゲーター メディア編」では、世界13カ国、1,900人以上のCMOを対象にメディア戦略とその優先事項を調査し、メディアがビジネス成長に不可欠であるというCMOの共通認識が明らかになった。特にAPAC地域のCMOは、消費者との接点を深めるためのオリジナルコンテンツや短編動画、ソーシャルコマースへの投資を重視していることが浮き彫りになった。

メディアの役割とAIの台頭

調査によれば、グローバルCMOの88%がメディアをビジネス成長に欠かせない要素と認識しており、34%がメディアにおけるAIの適用範囲が広がると予想している。一方で、39%がAIのユースケースやリスクの理解を2025年の最優先事項と位置づけている。特にAPACでは、景気回復への期待が高まっており、90%のCMOが収益成長を見込んでいる。日本では経済見通しが上半期の34%から下半期には86%に急増するなど、楽観的な見方が広がっている。

APACのCMOの主要な動向

• 収益と予算の伸び
  APACのCMOの87%が下半期に収益成長を報告しており、上半期の81%から増加。2025年の予算配分が増加すると見込むCMOは86%であり、日本では50%から87%へと大幅に増加している。
• コンテンツ戦略の進化
  APACのCMOは、消費者のフィードで目立つために、ダイナミックなコンテンツ戦略に注力している。特にパーソナライゼーションやショッパブルフォーマット、クリエイティブなストーリーテリングがブランドと消費者の結びつきを再定義している。
• メディアの課題
  最大の課題として挙げられるのは、規制強化（29%）、パフォーマンスと持続可能性のバランス（29%）、技術プラットフォームの透明性不足（28%）、新技術の統合（28%）である。

メディア投資と未来への課題

AIやアルゴリズムの進化に伴い、メディア投資はますます複雑化している。特にクローズドなプラットフォーム（Amazon、X、WeChatなど）による透明性の欠如がCMOにとって懸念材料となっている。また、新技術ソリューションの導入も課題として挙げられており、CMOはこれらの課題に取り組むため、深い技術的理解と戦略的なアプローチが求められている。

APACが示す未来対応型のメディアアプローチ

プレナ・アンドリュー氏（電通アジアCMO）は、「メディアはビジネス成長のための戦略的テコであり、APACは未来対応型のアプローチを推進する絶好の位置にある」と述べる。AIとアルゴリズムがマーケティングの中心に位置する中、単なる規模の追求ではない、革新的な体験を提供する戦略が鍵を握るという。

CMOの進化する役割

2025年に向けて、メディア戦略におけるパフォーマンスとブランドのバランスが重要視される中、CMOの役割も進化している。持続可能な成長を実現するためには、規制や技術的課題を克服しながら、組織変革を主導する新たな影響力を発揮する必要がある。APACのCMOは、これらの課題に対し、柔軟かつ先進的なアプローチで取り組むことで、ビジネス成長と消費者エンゲージメントの両立を目指している。（出典：Brandin in Asia、Dentsu：CMO Navigator: Media Edition）