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ジョーダン・ブランド、40周年記念と新時代への布石─伝説と革新をつなぐキャンペーン戦略

1984年、マイケル・ジョーダンはシカゴ・ブルズの新人選手としてナイキと5年250万ドルの契約を結び、その翌年にはスポーツとストリートカルチャーの境界を越える「エア・ジョーダン」シリーズが登場した。それは、アスリート・エンドースメントの在り方を再定義するブランドの幕開けであった。

2024年、ジョーダン・ブランドは創設から40年を迎え、1年間にわたるグローバル・キャンペーン「40 Years of Greatness」を展開している。この記念施策には、製品の発売、広告、イベントなど複数のタッチポイントが統合され、長年のファンと新世代の支持層の双方を対象にした感情的・文化的訴求が行われている。

CMOのケイトリン・サージェント氏は、ADWEEKの取材に対し、「このキャンペーンの核は、懐かしさと未来志向の両立にある」と語る。「ジョーダン・ブランドは単にスニーカーを販売するのではない。私たちが提供するのは“希望”という感情体験である」と述べた。

 

キャンペーンのハイライト:AJ40の登場とストーリーテリングの深化

「40 Years of Greatness」の中心には、最新バスケットボールモデル「エアジョーダン40(AJ40)」が据えられている。7月19日に公開された2分間のテレビスポットでは、NBAおよびWNBAの契約選手であるバム・アデバヨ(マイアミ・ヒート)、パオロ・バンチェロ(オーランド・マジック)、ギャビー・ウィリアムズ(シアトル・ストーム)らが登場し、Wieden+Kennedyが制作を手がけた。

広告の中盤では、1977年のブロードウェイ・ミュージカル『アニー』の楽曲「It’s the Hard Knock Life」が挿入され、バスケットボールとミュージカルが融合した斬新な演出がなされている。サージェント氏は、このAJ40のローンチを「キャンペーンの集大成」と位置づけており、ブランドの現在地と未来像を体現するプロダクトであると語っている。

過去の栄光だけでなく、未来の可能性を指し示す展開

キャンペーンは2023年12月、マイケル・ジョーダンがゲーム中にエアジョーダン1を初着用した歴史的瞬間を描くスポットからスタートした。続いて、ジェイレン・ハーツ(NFL)やルカ・ドンチッチ(NBA)など、多様な競技の現役トップ選手を起用した個別広告が公開されている。特に「Unbannable」と題されたハーツの広告は、彼が違反とされたスニーカー着用をきっかけに「偉大さは制限され得ない」というメッセージを打ち出した。

このほか、AJ40のリリースに加え、エアジョーダン1 “シャタード・バックボード”(8月23日発売)のような名作の復刻も行われており、ブランドの多層的な戦略がうかがえる。また、2月のNBAオールスター・ウィークエンドでは、「ジョーダン・ファム・フェスト」を開催し、リアルイベントによるファンとの接点創出にも力を注いでいる。

ターゲットは次世代─Z世代と高校生アスリートの巻き込みへ

Statistaの2024年3月のデータによると、Z世代の46%がジョーダン・ブランドに好意を示しており、34%が実際に所有しているという。これに伴い、同ブランドはNBAのトップ選手に加え、高校レベルの新進気鋭のアスリートにも焦点を当てている。

「若い選手たちからは、“このシューズでコートに立ちたい”という声を多く聞いている」とサージェント氏は述べる。同ブランドは5月、世界20都市で開催される1on1トーナメント「The One」の第2回をローンチし、15~18歳の少年少女が出場するこの大会を通じて、次世代への認知と共感の形成を進めている。優勝者はブランド・アンバサダーとして迎え入れられる予定である。

ブランドの“次元”を超える展望と、スポーツオフェンス戦略との連動

サージェント氏は、今後の展望として、「ジョーダン・ブランドをストリートウェアやバスケットボールの領域を超える存在として位置づけたい」と語る。2026年には、アメリカンフットボール、グローバルサッカー、ゴルフなど、異なる競技への本格進出を視野に入れており、「新たなブランド次元」を切り開く年になると見込まれている。

この方向性は、ナイキ本体が打ち出す新たな戦略「スポーツ・オフェンス」とも連動する。CEOエリオット・ヒルは最新の決算説明会で、「ライフスタイル・マーケティングよりも、パフォーマンス領域への注力が必要だ」と述べており、ジョーダン・ブランドもその路線を歩んでいる。

なお、ナイキの2024年決算によれば、ジョーダン・ブランドの売上は前年比16%減の73億ドルにとどまっており、ブランド再活性化は喫緊の課題である。

売上以上の“成功”を指標とするブランド再構築の行方

「40 Years of Greatness」キャンペーンの成否は、単なる売上高では測られないとサージェント氏は言う。ブランドが若年層と共鳴し、多様なスポーツカテゴリーで新しい地位を築けるかどうか。つまり、“ストリートウェア×バスケットボールの象徴”から、“クロススポーツで活躍するブランド”へと進化できるかが問われているのである。

ジョーダン・ブランドの40周年記念は、単なるノスタルジーではない。それは、スポーツパフォーマンスと物語性を融合させ、次の40年へと跳躍するための足場なのだ。(出典:Nike, Adweek)

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