Netflix、スポーツよりもライブイベントに将来性を見出す
Netflixは、スポーツ配信を含むライブイベントのストリーミングに注力し、エンターテインメントの新しい形態を模索している。同社の戦略は、単なるスポーツ中継ではなく、「イベント」としての価値を最大化することで、視聴者を引きつけることにある。
ライブイベントへの注力の背景
スポーツはライブ視聴の重要な要素であるが、Netflixはこれまでコストの高さなどから採用を避けていた。しかし、タイソン対パウエル戦やNFLクリスマスゲーム、WWEレスリングなどのイベントに取り組むことで、同社は「膨大なライブ視聴者」を獲得する機会を見出している。
共同CEOのテッド・サランドス氏は、「すべての夜がイベントとなるわけではないリーグスポーツに比べ、特別な瞬間に焦点を当てたライブイベントの方が魅力的である」と述べている。
ライブイベントの広告戦略と収益性
ライブイベントは、広告主にとって視聴者との強い感情的つながりを提供し、通常の広告枠以上の価値を生み出す。Netflixは、広告収益の拡大を目指し、ライブイベントを活用してブランドが広告枠契約者だけでなくフルプラン契約者にもリーチできるようにしている。
広告担当副社長のダミアン・ベルネ氏は、「Netflixは独自のアドテクノロジーを構築しており、広告主に柔軟性と革新性を提供するプラットフォームを目指している」と述べた。同社はすでにカナダでアドテクスタックを導入しており、2024年第2四半期には米国、2025年には他の市場へ展開予定だ。
視聴者数と広告の成長見通し
Netflixは、広告利用層が2年目には世界で約7,000万人に達すると予測。英国の調査によれば、広告層の視聴者数は約720万人で、1週間あたりの視聴時間は個人で約19時間、世帯レベルで約40時間に及ぶ。ヒットシリーズの続編(「Squid Game」「Emily in Paris」など)がエンゲージメントを引き上げる一方、ライブイベントは広告収益の「臨界点」に達する鍵を握ると考えられている。
成功事例と今後の計画
タイソン対パウエル戦は、世界で7,000万人が同時視聴し、総視聴者数は1億800万人を記録する成功を収めた。この結果にサランドス氏は「これほどの視聴者を集めたイベントはスーパーボウルを除けば80年代まで遡る」と述べた。さらに、NFLクリスマスゲームの広告枠はすでに完売しており、Netflixのライブイベント戦略が広告主からの関心を集めていることを示している。
ライブイベントがもたらす価値
サランドス氏は、「ライブイベントは視聴者に感情的なつながりを提供し、日常の視聴体験とは異なる特別な価値を生み出す」と強調。視聴者がイベントを記憶することで、広告主にとっても長期的なブランド認知向上の効果が期待できる。
Netflixのライブイベント戦略は、従来のスポーツ放送を超えた新たなビジネスモデルの模索を反映している。これにより、視聴者のエンゲージメントを高めるだけでなく、広告収益の大幅な成長が期待される。ライブイベントが同社の持続可能な成長の柱となるか、今後の動向に注目が集まる。(出典:SPT、WARC)