スターバックス再浮上の兆し—「Back to Starbucks」戦略が示す原点回帰

数年にわたる業績停滞を経て、スターバックスは再び成長軌道に戻りつつある。その立て直しの中核にあるのが「Back to Starbucks」と名付けられた戦略であり、ブランド構築への再投資と、「第三の場所」という同社の原点への回帰が明確に打ち出されている。
決算説明会においてCEOのブライアン・ニコルは、米国で展開を開始した新広告キャンペーン「Together」に言及し、この取り組みがブランドに対する好意や親近感を呼び起こすものであると強調した。彼は、スターバックスの“輝き”とは単なるロゴや商品ではなく、人と人とのつながりや感情に触れる瞬間に宿るものであり、その感覚が再び戻り始めていると語っている。

マーケティングと体験設計の再構築

スターバックスは近年の戦略転換において、短期的な来店促進を目的とした割引施策への依存を見直し、より効果の高いマーケティング投資へと資金配分を切り替えている。その象徴が、ブランドストーリーテリングを前面に押し出したコミュニケーションであり、前年に展開されたグローバルキャンペーン「Hello Again」でもその方向性は示されていた。
同社の戦略は、「どこにいても認知され、生活に関連し、感情的に愛されるブランド」であることを目指し、体験、儀式、つながりが循環するフライホイール構造を中核に据えている。また、消費者のライフスタイルや健康志向の変化にも対応しており、時間帯ごとのニーズの違いにも着目している。
朝の時間帯が習慣化された“ルーティン”であるのに対し、午後は気分転換やエネルギー補給を目的とした“リセット”の時間と位置づけられる。スターバックスはこの午後の需要に商機を見出し、第二の来店ピークを生み出すことを狙っている。
商品面では、タンパク質オプションなどを含むカスタマイズが大きな売上を生み、結果として約10億ドル規模の収益に貢献している。一方で、オペレーションの複雑化を避けるため、過去に提供していたメニューオプションの25〜30%を整理・削減する判断も行われた。
さらに、マーケティングカレンダーは従来よりも整理され、冬・春・夏・秋・ホリデーの5つの季節軸をベースに構成されている。これに加えて、SNSを起点とする「カルチュラル・ビーツ」と呼ばれる期間限定の企画や商品を重ねることで、ブランドが文化的な話題の中心に留まり続けることを狙っている。
店舗体験においても変化が見られる。同社が「アップリフト」プログラムの一環として快適な座席を再導入したところ、顧客の滞在時間が延び、エンゲージメント指標の改善が確認されたという。

スターバックスは何を取り戻そうとしているのか

今後に向けては、段階制の新たなロイヤルティプログラムが導入される予定であり、利用頻度に応じたインセンティブを設けることで、すべての会員が価値を実感できる設計が目指されている。また、AIを活用した「注文アシスタント」により、「元気を出したい」「寒い日に合うものがほしい」といった気分や目的に応じた商品提案を行う構想も示されている。
これらの取り組みが持つ意味は明確である。スターバックスは、かつての成功を支えた本質へと立ち返ろうとしている。モバイルオーダーやドライブスルーを重視するあまり、店内でくつろぎ、長く過ごせる「第三の場所」としての価値は一時的に後景化していた。
市場環境が変化する中で、ブランドが語るストーリーは、再び顧客の心に居場所を取り戻すための重要な要素となるだろう。ただし、スターバックスが先鞭をつけた“雰囲気”や“体験”を提供する競合チェーンや独立系カフェは、すでに数多く存在している。その中で、同社が再定義する「スターバックスらしさ」がどこまで支持を集められるのかが、今後の成否を分けることになる。(出典:WARC、画像:スターバックス)

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